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  • 2026年5月21日

GABAのはなし―精神科の隠れた主役―

GABAのはなし―精神科の隠れた主役―

精神科ではいろいろな薬を使います。

多くは神経細胞、特にシナプスのところの神経伝達物質受容体に働く薬がメインです。

広くは精神に何らかの作用をもたらす薬、狭くは精神に何らかの作用をもたらす薬、もっと狭くは精神科で使われる薬を向精神薬と言います。

 直訳すれば「精神に向いた薬」でしょうか。

 抗精神病薬という似た言葉も精神科で使うので注意が必要です。

 これは統合失調症などの精神病などに主に使う薬です。

 向精神薬は精神に影響があればなんでもいいので向精神薬は抗精神病薬を含みます。

 GABAチョコとかGABAが入っていて血圧を下げる野菜ジュースなどたまに広告宣伝しているのを見かけます。

 GABAというのはγアミノ酪酸(γ amino butyric acid)か何かの略でアミノ酸の一種です。

 アミノ酸というとαアミノ酸が生体内ではよく使われますがGABAはカルボキシル基とアミノ基が別の炭素についているγアミノ酸というものです。

 脳内伝達物質として生体内で使われています。

 抑制性の神経伝達物質でGABA受容体はいくつかタイプがありますが塩素チャンネルタンパクを開いて細胞内に塩化物イオンを流入させ、細部内電位というより膜電位を低下させます。

 神経細胞というのは電線みたいなものです。

 厳密にいうと神経細胞の細胞膜が電気信号を運ぶ媒体のような感じです。

 細胞内外の電位が異なりその変化により情報を細胞膜を使って他の神経細胞などに伝えていきます。

 その最終段階のシナプス感激で神経伝達物質が使われます。

 GABAはその神経伝達物質の一つでGABAが伝達前の神経細胞から放出されそれが別の神経細胞の受容体に結合することでその細胞の静止膜電位を下げて電気信号が伝わっていくのを抑制する働きがあります。

 GABAは抑制性神経伝達物質としてはたしか唯一のものです。

 また神経伝達物質には即時性のものと即時性ではない遅効性のものがありますが即時に効果を発揮します。

 

 GABA受容体作動薬というとGABAの代わりにGABAの役割を果たす薬の総称です。

薬理学、薬学の歴史でも大切ですし精神科臨床でも大切です。

 抗不安薬とか睡眠薬とかいうとGABA受容体作動薬が主役で特に長らくベンゾジアゼピン系とか非ベンゾジアゼピン系とかいうのが主役を張っていました。

 その前にはバルビツール系というGABA受容体作動薬がありましたが最近はあまり使われません。

 アルコールや吸入麻酔薬もGABA受容体は一応関係しているようですが多分いろいろな作用機序があるようでGABAだけで作用するわけではないようです。

 歴史的にはGABA受容体に働くいろいろな薬が使われてきましたし使われています。

 静脈麻酔薬のプロポフォールはGABAを介する作用が強いですし、吸入麻酔薬もGABAが関係します。

 メプロバメートというのが市販薬として使われていた時期がありますがこれはベンゾジアゼピン系でもバルビツール酸系でもないGABA受容体作動薬です。

 最近はザズベイという薬が新しく保険認可され使えるようになっていますがこれは抗うつ剤です。

 抗うつ作用を持つ向精神薬、あるいは構成新物質にはいろいろなものがありますがGABA受容体をターゲットとする物質で保険認可されたのは今回が初めてか昔あったとすれば久しぶりになります。

 それらの他にもGABA受容体作動薬はいろいろな用途で使われます。

 大腸内視鏡の時などで心を落ち着かせたり寝てもらうために使ったりします。

 手術の前投薬とか手術自体で使ったりとかもします。

 てんかん発作や熱性けいれんの際に使うこともありますし発作時ではなくても予防薬として使うこともあります。

 自律神経失調症に適用の者もあります。

 精神科領域で初診時や緊急時には急性の鎮静薬として使うためか今はあまり使わない用語かもしれませんがマイナートランキライザーと呼ばれていました。

 精神科救急などで急性の興奮状態の患者さんなどをいったん寝かしつけるためにフルニトラゼパムというGABA受容体作動薬が点滴されることは今でも多いと思います。

 これには議論があって昔の精神科救急学会では議論されていましたが今はどういう風向きになっているのかは不案内なのですみません。

 睡眠薬として最近はオレキシン受容体拮抗薬であるデエビゴ、クービビック、ベルソムラ、ボルズィなどのの売り上げが高い、あるいは高かったですが処方するとしてはベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の使用量の方がまだ多いのではないでしょうか。

 オレキシン受容体拮抗薬は新薬が多いので売り上げベースでは高く見えるという事情があります。

 GABA受容体作動薬は上手に使えばいいのですが上手に使うのが難しい場合があるので使用を避ける傾向が欧米を中心に強いです。

 日本でもアカデミックなにおいの強い大学病院系ではそういう傾向が強いと思われます。

 特に持続時間が短時間型のものは依存性やら乱用やら身体依存性の強さやらで使用を控えられる傾向があります。

 現在ベンゾジアゼピン系の薬剤がGABA受容体作動薬の主役なのはそういう有害事象が少ないからでベンゾジアゼピンの親戚で非ベンゾジアゼピン系というのは身体依存やら体制がないといわれていたりあっても少ないようなので使いやすい他、知恵の自畔ピン系というのがあったり、ベンゾジアゼピン系でもω1系とかω2系とか区別することもあり使い分けることがあります。

 GABA受容体作動薬は今もって精神科の主役級の登場人物ですがこれを避ける傾向があります。

 特に欧米系に強いですし、欧米系の影響を受けやすいアカデミックや研究や教育に関わる医者に多いです。

 欧米で避けられるのはGABA作動薬がアルコールの仲間とみられているためです。

 欧米は代謝酵素の関係かアルコール依存症の患者が多かったり問題になりやすい歴史がありました。

 また宗教の関係もあると思われます。

 日本人はアルコールに弱い人が多い国です。

 これはアルコールやアルデヒドの代謝酵素が関係します。

 生物が陸上生活を始めてから腐敗と発酵が問題になるようになりました。

 陸上で生物の時間がたった死骸や腐肉を食べる際にそれらが腐敗と発酵でアルコールを含む場合があり生物には早い段階からアルコール代謝酵素やアルデヒド代謝酵素を持つものがあります。

 遺伝子変異の関係でこれらにもいくつかのタイプがあります。

 これは日本人法医学者が発見したのですが日本人はアルコール代謝酵素の活性が高くてアルデヒド代謝酵素の活性が低い人が多いようです。

 日本人というよりアルデヒド代謝酵素の変化は長江流域のコメ栽培の時期に起こったという説があるので東アジアなど日本を含むもっと広域の問題かもしれません。

 アルコールが入ると人間は気持ちよくなります。

 それに対してアルデヒドは毒物で有害なので体にたまると有毒で不快な症状を起こします。

 日本人は気持ちよいアルコールがすぐに代謝されてしまって有毒なアルデヒドが体がたまってしまう人が多いためアルコールに弱かったり、アルコールが嫌いな人が多いです。

 欧米人だけか知りませんが逆にアルコールが代謝されず体の中に長くとどまり代謝されてアルデヒドができてもアルデヒドがすぐ代謝されて体に残らない人が欧米には多くいてそういう人はアルコールの気持ちよさだけを感じられるのでアルコール依存症になりやすいと言われています。

 ただアルコールはアルデヒドのように短期で体に炎症を起こして顔が真っ赤になったりするような毒性はありませんが長期に大量に飲み続けるとやっぱり有害です。

 また長期ではなくても酒が入っていれば注意力や認知機能が下がったりして飲酒運転は禁止されているのは多分日本以外でもそうでしょう。

 そういう事情のためか欧米ではアルコール依存症が嫌われやすく、アルコールが警戒されやすいです。

 また依存には身体的依存と心理的依存があります。

 身体的依存というのは物質に耐性がついたりある程度長く大量に止揚していて急にやめると退薬症状/離脱症状が生じたりするものを指します。

 他方で心理的依存はそういう物質による代謝酵素の誘導とか休息中止によるリバウンド(反跳)症状はでませんが、何となくその物質を使っていると安心で、ないと不安となると心理的依存です。

 基本短時間作用型は効きの切れ味がよいのと薬が切れる時の感じが分かりやすいので依存になりやすいと言われます。

 ドラックで言えば注射の方が血中濃度が上がりやすいし、炙りで肺吸入の方が血中濃度が上がりやすいのでそのようにドラッグを使う場合があります。

 また経口摂取では腸に吸収された後一旦肝臓で代謝されるので摂取効率が低いというのもあります。

 また薬固有の体制のつきにくさなどがあってそういうのを予想して処方調整を行います。

 今主流のGABA作動薬のベンゾジアゼピン系は薬事態での毒性はアルコールのように臓器毒性などがなく基本過量服用しても致死量がありません。

睡眠薬として使う場合はいまだ欠かせぬ薬剤です。

抗不安薬としては短期型や中時間作用型は使われない方向になってきて使う場合には長時間作用型を使う方向になってきている感じです。

少ない量では前頭葉や連合野みたいな高次なところから聞くのか軽度の脱抑制や麻酔のような興奮期みたいなのが他の鎮静系薬剤と同じくありそうで元気になったり体調がよくなったり疲れが取れたり集中力が上がったりするようです。

量を増やしていくとリラックス、不安、緊張をとる、うつを改善する、痛み止め作用、筋弛緩で肩こりや頭痛に効くなどの作用があります。

てんかんにも広く効きます。

もっと量が多くなると眠くなります。

睡眠薬として使う場合は眠気を利用するわけですがこれまた作用時間によってうまく使う必要があります。

 深睡眠を減らすなどがあるようですが人間は寝ている間にも起きているときのストレスは残っているものでそれが睡眠を悪くするのでベンゾジアゼピン系睡眠薬は寝ているときに残っているストレス症状にも効くためうつや不安では中途覚醒や夢を見やすいオレキシン受容体拮抗薬より使いやすい場合があります。

 また近年働き方改革で仕事のオンオフやメリハリのある生活、スケジュールがきっちりとした生活になると欧米のエリートなどがそんな感じですが睡眠薬を使って仕事外の時間も睡眠も上手にコントロール必要が高まる場合があります。

 大人はストレス関連症の適応反応症の様なストレスがあると頭やおなかや睡眠に症状が出やすいです。

 子供は体ではおなかに症状が出やすい感じですがまだ自分の心身発達が未分化なせいかあるいは言語化苦手なせいかもしれません。

 小学校くらいの学童期だと大人と違って睡眠にはストレスが出にくいようです。

 もっと急性で激しいストレスや逆に慢性長期のストレスには別の身体症状が出たりするのかもしれません。

 最近はリモート勤務を減らすかなくすかして通勤を義務付ける会社が増えてきて電車が込むようで電車周りのパニック障害などが増えてきているようです。

 電車周辺で起こるのなら電車や駅で起きる特定の恐怖症と名付けた方がいいのかもしれません。

 慢性的になるとストレス学説のハンスセリエの3徴のように胃潰瘍、胸腺萎縮、副腎萎縮が起きるのかもしれませんが今は時代も違いまし古い学説なので知っておく感じでいいかもしれません。