- 2026年2月10日
税の地図:会計三票で読む「どこから取るか」と正統性(レジティマシー)
税の地図:会計三票で読む「どこから取るか」と正統性(レジティマシー)
税の議論って、だいたい「高い/安い」で殴り合いになりがちなんですが、**いちばん大事なのは“どこに課税するか”**なんですよね。
そこで今回は、税金を 会計三票(P/L・B/S・C/F) にマッピングして、「その税は何を狙っていて、どこが揉めポイントか」を一望できる“地図”にします🗺️
まず前提:会計三票=3つの「財布の見方」
- P/L(損益計算書)=フロー:稼いだ・儲かった・給与が出た(所得・利益)
- B/S(貸借対照表)=ストック:持ってる・ためてる・引き継ぐ(資産・保有)
- C/F(キャッシュフロー)=取引:買った・使った・契約した(支払い・取引)
税は基本的に、この どこか(または混合) に刺さっています。
「レジティマシー(正統性)」のざっくり3類型
税が納得されやすい“筋”は、だいたいこの3つです。
- 応能負担:「払える人が多めに」(所得税・相続税など)
- 受益者負担:「使う人が払う」(道路・上下水・登録などの発想)
- ピグー税(行動修正):「社会的に害がある行動は高めに」(たばこ・酒・燃料など)
で、揉めるのはたいてい
- 二重取りっぽく見える
- 逆進的(低所得ほどキツい)
- 目的と税目の関係が薄い
- 徴税の都合が透ける(“取りやすい所から取ってない?”)
のどれかです。
会計三票マトリクス(図1枚)
こちらが「主要税目を会計三票に全部配置」した俯瞰図です👇
(図中の根拠:消費税は標準10%・軽減8% /消費税は仕入控除で“累積”を排除する設計 /個別消費税が消費税の課税標準に含まれる扱い )
日本の主要税目:レジティマシー/非レジティマシー短評(一覧表)
| 税目(準税含む) | 三票のどこ? | レジティマシー(筋) | 非レジティマシー(揉めポイント) |
|---|---|---|---|
| 所得税 | P/L | 応能負担・再分配(格差調整) | 制度が複雑、勤労インセンティブ議論 |
| 住民税 | P/L | 地方サービスの広い財源 | 定額要素が逆進的に感じられることも |
| 法人税(法人住民税・事業税含む) | P/L | 社会インフラ上での利益に負担 | “結局だれが負担?”(賃金・価格へ転嫁論) |
| 社会保険料(厚年・健保・介護・雇用など) | P/L(準税) | 「保険」=給付とのひも付き | 実態は税に近い/労働コスト化(折半など) |
| 消費税(国+地方) | C/F | 広く薄く・安定財源/社会保障財源の説明 | 逆進性、軽減税率の複雑さ |
| 酒税 | C/F | “嗜好品+社会コスト”のピグー税 | 逆進性、嗜好への介入感 |
| たばこ税 | C/F | ピグー税の代表格(健康被害コスト) | 重負担・低所得ほど負担感が出やすい(価格に複数税が内包) |
| 燃料課税(揮発油税等・石油石炭税等) | C/F | 道路・環境・外部性(受益+行動修正) | “税の上に消費税”に見える問題:個別消費税は課税標準に含まれる扱い /税率の議論(暫定等) |
| 自動車:環境性能割(取得) | B/S×C/F(混合) | 取得段階で環境性能を促す | 取得税廃止→環境性能割へ(制度変更で分かりにくい) |
| 自動車税・軽自動車税(保有) | B/S(保有) | 道路・環境・保有コストの負担 | 生活必需と感じる層には“罰金感” |
| 自動車重量税(車検時) | B/S寄り | 車両保有の社会コスト | 取引タイミング課税で実感が強い |
| 固定資産税・都市計画税 | B/S | 土地は逃げない=安定財源(地方) | “資産はあるが現金がない”層にキツい |
| 相続税 | B/S | 富の固定化を緩める(応能負担) | “一生で稼いだ後にまた?”という二重取り感 |
| 贈与税 | B/S | 相続回避の穴塞ぎ(整合性) | ルールが難しく感じやすい |
| 登録免許税 | B/S×C/F(混合) | 登記・権利移転の制度コスト | 取引の摩擦(動かすほど取られる) |
| 印紙税 | C/F | 文書取引の“手数料+税”の歴史枠 | デジタル時代に古典的に見える |
| 関税 | C/F | 国内産業保護・安全保障・交渉カード | 最終的に消費者負担になりやすい側面 |
「二重取り」って何が起きてるの?(ガソリンを例に超整理)
直感的な「二重課税だろ!」が起きやすいのは、個別消費税(酒税・たばこ税・揮発油税など)を含んだ販売価格に、さらに消費税がかかる構造です。
ただし税務上は、「個別消費税はメーカー等が負担する税で販売価額の一部を構成するので、消費税の課税標準に入る」という整理になっています
つまり、
- 制度の論理:価格の一部=課税標準に含まれる(合法)
- 生活者の感覚:税が乗ったものにさらに税=“税の上に税”に見える(不満の源)
ここが“非レジティマシー爆心地”です💥
税だけ見ない:社会保険料・補助金・控除・還付は「税と給付の合体ロボ」
現代の実態は、**税+社会保険料+給付(補助金・医療・年金)+控除(減税)**が一体の設計です。
- 社会保険料は「保険」っぽい顔で、実務的には準税の性格が強い(折半・標準報酬などの制度設計)
- 消費税は「社会保障に使う」と説明される枠組みがある
- 控除や還付は「取らない/返す」という形の歳出(支出)の裏口でもある
なので、改革を見るときは
**「どの税目を上げ下げするか」+「給付・控除をどう動かすか」**をセットで見るのが勝ち筋です。
使い方:政治家の税制トークを3秒で解剖するチェックリスト🧠
- それは P/L・B/S・C/Fのどこの話?
- 正統化ロジックは 応能/受益/行動修正のどれ?
- 反発ポイントは 逆進性/二重取り感/目的の薄さ/複雑さのどれ?
この4点が揃うと、税制の話が「感情」から「設計」になります。