- 2026年2月10日
税高ければ国滅ぶ?
税高ければ国滅ぶ?
社会の構造を透視するフレームワーク
「税金を会計三表(PL/BS/CF)のどこから掠め取っているか」**という視点で分類すると、その税金の「性格(容赦のなさ)」や「レジティマシー(正統性・納得感)」、そして「徴税技術としての狡猾さ」が恐ろしいほどクリアに見えてきます。
「会計的視点による税金の解剖図」を整理してみました。
1. P/L(損益計算書)への課税:フローへの介入
P/Lの「上(売上)」から取るか、「下(利益)」から取るかで、その税の残酷さと正統性が決まります。
① 売上(Top Line)から取る税:「容赦なき徴収」
- 消費税、年貢(歴史的文脈)
- 会計的位置: 売上高(Revenue)に直結、あるいは売上総利益(粗利)の前段階。
- 分析:
- 年貢=売上税: まさにその通りです。江戸時代の年貢は収穫高(=売上)に対する課税であり、肥料代や労賃(=経費)を考慮しないため、**「赤字でも払え」**という非常に過酷な税制です。
- 消費税: これも「赤字企業でも払う」必要があります。付加価値(売上ー仕入)にかかるため、人件費という「経費」にも課税されている側面があります。
- レジティマシー: 低い(強権的)。 「担税力(儲かっているか)」を無視するため、逆進性が強く、生活必需品にかかると社会の歪みを生みます。しかし、政府にとっては「景気に左右されず安定して取れる(取りっぱぐれがない)」という点で、徴税技術としては優秀です。
② 費用(Expenses)に含まれる税:「罪と罰の徴収」
- 酒税、たばこ税、炭素税
- 会計的位置: 売上原価、あるいは販管費。
- 分析:
- これらは**「ピグー税(外部不経済の内部化)」**というレジティマシーで武装しています。「健康被害や環境負荷という社会コストを、価格に上乗せして払え」という理屈です。
- しかし実態は、中毒性(価格弾力性が低い)を利用した**「取れるところから取る」**という、政府の収益源確保の側面が強いです。
- レジティマシー: 建前は高い(社会正義)が、実態は嗜好品への懲罰的課税。
③ 利益(Bottom Line)から取る税:「成功へのペナルティ」
- 法人税、所得税、住民税
- 会計的位置: 税引前当期純利益(Net Income Before Taxes)からの控除。
- 分析:
- 「経費を引いた後の残り(儲け)」から取るため、**「担税力に応じた課税」**という点で近代税制としてのレジティマシーは最も高いです。
- しかし、累進課税がきつすぎると「頑張って稼ぐ意欲(P/Lを良くする努力)」を削ぐため、「悪平等」や「海外流出」という別の歪みを生みます。
2. B/S(貸借対照表)への課税:ストックへの介入
ここは「持っていること」自体への課税であり、キャッシュフローを生まない資産からも取るため、最も痛みを伴います。
① 資産(Assets)の「保有」にかかる税:「存在税」
- 固定資産税、都市計画税
- 会計的位置: 固定資産(Fixed Assets)の簿価(評価額)に対して課税。
- 分析:
- 利益を生んでいない土地や建物からも毎年キャッシュを奪います。これは**「資産の国有化(賃料徴収)」**に近い性質を持ちます。
- レジティマシー: 「公共サービス(インフラ)の恩恵を受けている対価」とされますが、地価が下がっているのに税額が下がらない場合などは、正統性が揺らぎます。
② 純資産(Net Assets)の「移転」にかかる税:「富の清算」
- 相続税、贈与税
- 会計的位置: 資本の部(純資産)の移動時に発生。
- 分析:
- B/Sの左側(現金や不動産)を右側(次世代)に移す際にかかるゲートキーパー料。
- 一度所得税(P/L)を払って蓄積したB/Sに対して再度課税するため、論理的には**「二重課税」**の疑いが濃厚です。
- レジティマシー: 「格差の固定化防止(富の再分配)」という社会思想的な正義のみで成立しています。経済合理性(効率性)からは説明がつきにくい税です。
3. 自動車税制:徴税技術の「歪んだ芸術品」
ご指摘の通り、車周りの税金は、P/L、B/S、そして使用(CF)のすべてのプロセスに巧妙に罠が仕掛けられた、ある種の**「悪魔的芸術品」**です。
- 取得時(B/S計上時): 環境性能割(旧取得税)、消費税。
- 保有時(B/S維持コスト): 自動車税、重量税(車検時)。
- 使用時(P/L費用/CF流出): ガソリン税、石油石炭税、そしてそれらにかかる消費税。
【レジティマシーの欠如=Tax on Tax】 特にガソリン税は、「税金(ガソリン税)が含まれた価格に対して、さらに消費税をかける」という**二重課税(Tax on Tax)が行われています。これは会計理論上も租税理論上も完全に「非レジティマシー(正当性なし)」**ですが、「道路特定財源だった名残」などの屁理屈(今は一般財源化されていますが)で維持されています。ここは社会の歪みが凝縮された部分と言えます。
4. 「隠れP/L」としての社会保険料と補助金
最後に、税金という名前ではないものの、実質的なP/Lへのインパクトについて。
- 社会保険料(第二の税):
- 名目は「保険料」ですが、強制徴収であり、給与天引き(源泉徴収)されるため、実態は**「目的税化された所得税」**です。
- 問題点: 逆進性(上限があるため高所得者ほど負担率が低い)があり、現役世代のP/Lを直撃しています。「相互扶助」というレジティマシーが、世代間格差によって崩れつつあります。
- 補助金・控除(政府の支出=負の税):
- これは政府側から見たP/Lの費用ですが、受け取る側にとっては**「恣意的な利益」**です。
- 問題点: 特定の産業や属性(例:持ち家優遇、特定産業への補助)にのみ利益を供与するため、「公平性」というレジティマシーが常に問われます。 政治的なパワーゲームで決まることが多く、最も不透明な領域です。
まとめ
- レジティマシーが高い: 利益(Bottom Line)への課税。ただし、やりすぎると経済が死ぬ。
- レジティマシーが低い(が、効率的): 売上(Top Line)や資産(Stock)への課税、および二重課税(車など)。
- 社会思想的: 相続税(格差是正)、酒たばこ税(懲罰/矯正)。
「税重ければ国滅ぶ」の現代版は、単に税率が高いことではなく、「会計上の理屈に合わない場所(赤字の売上や、生まない資産)から、複雑怪奇な理屈(二重課税など)で吸い上げる」ことによって、経済主体の血管(キャッシュフロー)を詰まらせる点にあるのかもしれません。