- 2025年9月11日
わかりやすい構造主義はなぜ気づかれないのか?構造主義の効率的な使い方、医学の例、機能と形態
わかりやすい構造主義はなぜ気づかれないのか?構造主義の効率的な使い方、医学の例、機能と形態
・構造主義は目に見えないものを見る気づく
構造主義と実存論の関係のいい面と悪い面を本稿では記事にしてまとめてみました。
これは一面的な見方ですが知っていれば損はしない考え方です。
構造主義の説明、あるいは構造主義の立役者のレヴィ=ストロースを紹介する際に昔はよく「目に見えない構造」というような言い方をしていました。
「この目に見えなさ」「気づかれにくさ」が問題と言えば問題なのですが問題というのは問題とするから問題なのであって問題としなければ問題でないこともあります。
それに問題というネガティブなニュアンスを含む見方をするよりはむしろいい面がたくさんあります。
本稿のポイントは2点になります。
物事はいい面も悪い面もあるのはコインのようなもので表も裏もありますし解釈次第でというよりはトレードオフと機会費用という形で例えば経済学では学問の原理とされています。
これはもう一つの原理である「希少性」とセットになっているかもしれません。
まず構造主義の「目に見えない構造」という特徴は2つの側面があります。
① 物事には実在論の他に構造主義によるとらえ方があるのに気づきにくい。そのため構造主義の発見は遅れたし、習得や実践応用が難しい時がある。社会の認知もまだ低くいろいろな物が構造主義でとらえられていないところがある。
② 実在論と構造主義を明確に分けて両者の見方を同時、あるいは選択的に行って応用するというのはめんどくさいし労力がかかる。だったら別に構造主義を知らなくても目に見えず築かれないままでいた方が何の分野においても実用的な場合が多い。構造主義を理解して活用できる場合でも実在論と構造主義のいいとこどりをしてパッケージとして実用化した方が効率的である。
実在論と構造主義のいいとこどりでパッケージというかハイブリット化しているほうが実は我々の生活実感では自然で直観的です。
だから構造主義の発見が遅れたと言えるかもしれません。
構造主義は機能だったり作用だったりの形をとっていますが普通は実在論と構造主義をごちゃまぜにしていることが多いです。
構造主義を知っている人でも常に実在論と構造主義を分けて物事を見ているわけではないでしょう。
知らない人はなおさらです。
でも構造主義を知っていれば構造主義的な見方をしたり、物事や対象の実在論的側面と構造主義的側面を分ける作業ができますが知らないとできません。
ただ構造主義は学習して習得したり意識しないとまさに「目に見えない構造」として気づかず、意識せずのままになってしまがちです。
それはそれでいいのです。
構造主義が数学や言語学などのさらに基礎や根本を問うようなとんがった部分でまず発見されたのも日常使いには特に分ける必要がないからかもしれません。
ただ実在論と構造主義をしっかり分けてみる見方からすれば世の中の多くは実在論と構造主義が混在したまま扱われているように見えるだけです。
見せかけの問題とも言えてそれで支障が生じるわけでもありません。
特に実学分野、応用科学分野、日常生活や特殊な職業を除けば社会生活の仕事の場面など人生の多くはまぜこぜで生活している場合が多いです。
これは人間の労力も有限ですし、実在論と構造主義を分けるというのは無駄な労力というか単純なものを複雑にみるような無駄にリソースを消費することになってしまうので合理的な事ではあります。
ですから普通は実在論と構造主義をまぜこぜにしているのは理にかなっています。
そもそも両者は独立なので別に両方の見方をハイブリッドさせてもいいのです。
問題なのは必要な時に両者を分けて考えないといけない場合です。
それなりに構造主義を知っている場合は時間や労力を費やす場合はあるかもしれませんが費やしさえすれば両方の見方ができるかもしれません。
まあ失敗することもあるかもしれませんし、勘違ったり不完全だったりする場合はあるかもしれませんが。
でもそもそも構造主義を知らなかったり、対象の物事を実在論と構造主義に分けるという考え方自体がもともとない場合には普通はわけることはできません。
それが普通です。
でも必要に応じて構造主義を使えると便利です。
本稿ではそういったことを医学と人体を例にして説明します。
・哲学の歴史を見ると…、構造主義発見のための旅路
人間は実在論と構造主義を無意識にまぜこぜにして使っているのが普通です。
哲学の発展の歴史を見ると実在論はまずありきでそこから実在論だけではすっきりしないもやもやを解消するために試行錯誤がなされてついに実在論と構造主義の二分法に至って哲学という学問が完成した、と見ることができます。
プラトンのイデア論ではすっきりしないのでアリストテレスの質料形相論やデュナモスエネルゲイアエンテレケイア論、中世普遍論争には実在論と唯名論、近代大陸合理論とイギリス経験論、デカルトの物心二元論とスピノザの一元論、カントとドイツ観念主義、実在主義から現象学、構造主義からポスト構造主義というの流れを見ていくと個人の成長による段階的認知発達との似ているといえば似ています。
生物学の有名な見方があります。
「個体発生は系統発生をたどる」(逆に「系統発生は個体発生をたどる」でもいいかもしれない)というものです。
個体の認知発達というと構成主義発達心理学のピアジェの理論によると人間の認知発達の理論があり、それは「感覚運動期」→「直観的発達段階」→「具体的操作段階」→「形式的操作段階」と変わっていくとなっています。
またフロイトを発展させたエリクソンのライフコース論も精神発達の精神年齢的な違いを説明する理論です。
これに似ているといえば似ていないこともありません。
感覚、反応とか、直観の発生は実在論的な認知の発達とも言えます。
学童期(小学校くらい)は抽象的な認知はまだ早いですが中学、高校となると第二次性徴や思春期とともに一気に観念的、概念的思想や抽象的な思想ができるようになってカントの哲学などがよく分かるようになります。
その後の自己同一性や役割同一性の確立の青年期は実存哲学と相性がいいです。
現象学や構造主義みたいな知的で冷静な哲学は壮年期で人間が固まってきた年齢に合うかもしれませんしポスト構造主義みたいな寛容でありつつ冷めた見方も熟年期や老年期に会うのかもしれません。
そんな風に見ると思春期、青年期や場合によっては壮年期でも構造主義的見方を習得するのは難しいかもしれませんし、習得するには学習が必要かもしれません。
・そもそも構造主義を習得する必要がない?
そもそも構造主義を習得して、実在論と構造主義の二刀流になる必要はないのかもしれません。
実際には実在論にちょっと構造主義的な要素を持ち込んだような中途半端な物でも十分な場合が多いです。
とんがった学問の基礎や最先端では必要かもしれませんが、相当な専門領域でも実在論と構造主義をはっきり分ける必要がないことが多いです。
そもそも実在論と構造主義は独立な考え方でどちらかが成り立てばどちらかが成り立たないような背反な考え方ではありません。
だからハイブリッドすることができます。
妙にいったん実在論の部分と構造主義の部分に分けてそれを適宜使い分けるみたいなことをしなくてもハイブリッドのまま使った方が手間がかからず良いかもしれません。
例えば医学、あるいは我々の人間の体を例にハイブリッドでもいいけど分けることもできる例を見ていきましょう。
・医学は人間を形態と機能に分ける
医学教育では人間を形態と機能に分けます。
大雑把に言うと形態は物体を重視する実在論的なもので、機能は関係や作用を重視する構造主義的なものです。
両者は機能の基礎には形態があり、形態があるからこそ機能があるといったように分かちがたく結びつけて教えられる傾向があります。
実在論と構造主義をうまくパッケージして無駄なく単純化して医療という実践応用にスムーズに迅速に活用できるようにします。
人体を形態という実在論と機能という構造主義に分けて、みたいなことをやるのはリソースの無駄だし現実的でも実践的でもなく医学研究だけをしている医学者ならともかく実際の現場で医療をしている臨床医にはむしろ害悪になりえます。
形態を担うのは主に解剖学で、病理学でも顕微鏡などで細胞や組織を観察する訓練を行います。
他方で人間を昨日としてみる代表は生理学です。
それに生化学なども人間の代謝系を有機化学・分子生物学的な形態で見る側面もありますが、それらは同時に物理化学や量子科学のような機能的な側面も持っています。
医学教育ではどの国も高等教育として大学教養で物理、化学、生物学、数学などを習得させてそれから基礎医学である解剖学や生理学、病理学、生理学へ進み、それらのあとに臨床医学・医療の教育を行います。
普通は高校では理系では理科は2教科なので化学はとる人が多いですが物理か生物学を勉強していない場合があります。
教養課程の勉強でカバーできればいいのですが実はあまりできなくても基礎や臨床で単位を全部取って卒試や国試を受かることができてしまいます。
ただ物理学をやっていなければ例えば
実情を話せば頭のいい学生であれば、
・人間は実在論と構造主義を混ぜている時の方が普通
理論を理解したり論理を使いこなそうとしたりすれば構造主義的観点が必要になってきます。
すなわち知的な場面で有利です。
数学基礎論とか言語の構造とかでなくてもいろいろな科学や数学、学校で習う教科でも理論系で扱う理論という構造主義っぽいものと実証系で扱う観察、実験、測定などの実在論っぽいものを分けて考えるのが大切になります。
逆にとんがった学問でない分野は混ぜた方が仕事も学問も捗る場合があります。
典型的にいうと医学や工学などです。
自然科学では物理学を除けば化学も生物学も地学も実は物理学の応用化学です。
科学や生物学や地学を突き詰めていくと物理学になるからです。
数学や自然科学をしっかり勉強した上で人間や生物を見るといろいろな科学理論の集合体で組み合わせで作られています。
人体を理解したいときには脳と心の関係以外はなぜを重ねていくと最後は科学の法則で説明します。
それを例に説明していきます。
・生物の目的と偶然の関係
多細胞生物でも単細胞生物でも生きていくために一番大切なのは細胞の外部環境と整えることです。
細胞は液体に囲まれていないと生きていけません。
その液体のナトリウム濃度やカリウム濃度が大切です。
温度も大切です。
圧力も大切です。
pHも大切です。
そういうのを維持するのを19世紀の医学者ベルナールは「ホメオスターシス(恒常性)」と名づけました。
細胞外液の恒常性の維持、このために人間の各臓器はそれぞれ特徴的な機能を持っています。
では細胞は生きているのかというと人間が生きるためですが人間がなぜ生きているかというとこれは子孫を残すためです。
ドーキンスという学者は「DNAを残すため」と端的に表現しました。
このように書くと人間の生きる目的はDNAを残すためのような感じに聞こえます。
人体の細胞というのは2種類に分かれます。
体細胞と性(生殖)細胞です。
体細胞はほとんどすべての細胞です。
性細胞は端的に言うと精子と卵子だけです。
人間は体細胞が主役のように見えますが実は体細胞は脇役で性細胞が主役です。
人間の目的は生殖をおこなうことです、…という考え方もできますがダーウィンなどの進化論によるとそれも違います。
進化論は目的達成論型の進化論と偶然論型の進化論があります。
前者はラマルクなどの古い進化論、後者はダーウィンなどの新しい進化論です。
両者は人間が進化するかどうかは置いておいて世代継体に対する考え方が違います。
前者は生物が生きて子孫を残すのはそれが目的だからと考えます。
後者は生物が生きて子孫を残すのは単に結果で長い時間の間に作られたシステムの軍禅の産物だと考えます。
言い換えると次の世代を残すシステムが偶然残って現在があると考えます。
我々が生きたり子供を残るのは目的ではなく結果であったり偶然に過ぎないのです。
ただ自体をややこしくすることが起こってしまいました。
脳の発達です。
脳は変な器官で特に発達すると新皮質というのが増大しますがこいつが上の常識を破る働きをします。
発達した脳は生き延びたり子孫を残したりするために使われることもあれば、子孫を残さない、生き延びないなどの方向に働くこともあります。
前頭葉というのは身体を構成する最新のモジュールといてもよく発達した前頭葉を持った人類は人類の最新のアップデートバージョンですがその働きは一言でいうと、抑えるとか抑制する、です。
これが本能を含めて古い脳全体を抑える働きをします。
もっと言えば神経系は全体として反射で動いていますが直前にできた層の反射を新しくできた層が抑えて別の反射をするという層構造で発達してきたという説があり、神経科学や精神医学ではジャクソニズムとか、ネオジャクソニズムと言われます。
脳科学でも認知科学でも脳の事はよく分かっていません。
本稿では脳の解説はあまりしないことにします。
昔は生き延びたり子孫を残したりするのは大脳新皮質や連合野のような新しい脳の発達した部分でなく「本能」というものが勝手にやってくれるように思われていたのですが、現在は前頭葉の発達や人間社会の発達(これも脳の延長と言えるかもしれません)によって生きたり子孫を残すのが当たり前ではなくなっているのが現在の人類史の状況です。
・循環系の役割:大循環と微小循環
では解剖学的に分類される各臓器や器官や組織レベルでその機能とそれを支える化学法則を見ていきましょう。
まずは心臓です。
これは血液の循環の機能を果たします。
体は肺とそれ以外の体の部分を分けて考えてください。
心臓の左心室から大動脈を通じて肺以外の体の部分に血液を送ります。
これで酸素や糖やその他の物質を運びます。
送られた血液は大静脈によって心臓の右心房に送られます。右心房に送られた血液は心臓の右心室に送られ右心室から大静脈を通じて肺に送られます。
肺に送られた血液は肺を栄養しつつ酸素を吸収し二酸化炭素を放出するガス交換を行います。
そして肺から左心房に戻され左心室に送られ大動脈で全身に送られる、というのを繰り返します。
血液は血球と血漿に分けられます。
血球は赤血球、白血球、血小板などの細胞自身や細胞由来の物で、血漿は血液の液体部分でいろいろな成分が溶け込んでいます。
血液が酸素補給したり栄養したい細胞は血管の外にあります。
体は血管以外は細胞と細胞間質で形成され細胞間質は細胞外液と基質と繊維によってつくられます。
基質はヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸が有名です。
保湿成分として知られてますよね。
骨などではハイドロキシアパタイトなど無機成分が混じる場合もあります。
繊維は有名なのはコラーゲンです。
コラーゲンは人体で一番多いたんぱく質です。
ちなみに自然界で一番多いたんぱく質はRUBISCOと呼ばれる光合成に関係するたんぱく質です。
大循環では血液が体中を循環しますが血球成分は血管の外に出ません。
酸素や栄養を補給したり老廃物というかいらない代謝成分を回収するには血管の外を決勝が行き来する必要があります。
これが行われるのが毛細血管と呼ばれる部分で毛細血管から血漿が流出しいらないものを回収してまた毛細血管に戻っていきます。
この流れにより細胞外液に浮いている細胞の外部環境である細胞外液を一定の状態、すなわちホメオスターシスを保ちます。
この毛細血管部分での血漿の循環を微小循環と言います。
循環器系はこの2つの循環、体循環と微小循環で成り立っており、その目的は細胞外液の恒常性(ホメオスターシス)を守ることです。
心筋細胞には電気伝導がいい経路があってそれがタイミングよい心筋収縮のリズムを作り出し、心電図で心臓の異常を読み解くことができます。
電磁気学の知識があると心電図の意味を理解できますがこれは最近はコンピュータが人間に代替してくれる面が大きいです。
・呼吸器系:ガス交換
地球は酸素リッチであり特に現在の地球は地表の大気が植物の光合成のおかげで酸素リッチです。
人間の主なエネルギー源は炭水化物や脂質を参加することで得られます。
そのためには酸素を取り入れ二酸化炭素を排出するガス交換を行わなければいけません。
そのための臓器が肺です。
肺は風船のように膨らんだり縮んだりして換気を行い肺の中のガスを入れ替えてガス交換が行われる肺胞の中の空気を酸素が多く二酸化炭素が少ないように保ちます。
それにより肺胞の血管に含まれる酸素が少なく二酸化炭素が多く含まれる血液との間でガス交換を行います。
・肝臓:化学工場
肝臓の役割は血液の血漿の成分の調整です。
決勝にはいろいろな分子や化学物質がありますがそれを調整します。
胎児期・新生児早期には血球の生産も行ったりしていたと思いますが血球の生成は途中で骨髄に代替されます。
その他肝臓は微小な胆管が張り巡らされ胆汁を作り消化管に分泌します。
これは消化管での脂質の吸収に必要です。
生化学の司令塔なので他の臓器と連携して血漿成分を維持しますが、生化学と有機化学の知識があると理解が進み、かつ量子力学や軌道反応論など知っていればさらに沼って面白くもあります。
健康や栄養に興味がある人には面白い分野です。
この臓器は予備能力がおおいので2/3くらいなくてもある程度正常維持できるので移植のドナーにはなりやすいです。
でもないと血漿交換すればいきれるかもしれませんが現実的には死んでしまいます。
まあ他の臓器もそうかもしれませんが。
・腎臓:電解質、浸透圧、老廃物排泄、血圧調整、pH調整など。
腎臓は血漿をろ過しておしっこを作っておしっこから老廃物を排泄する臓器です。
大便も排泄物だから小便と大便の2つの仕方で人間は不要なものを排泄するのか?というとこの2つはかなり違うものです。
ざっくり言えば消化管は口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門までつながっていますが、これはトポロジカルに言えば体の外です。
ですからうんこは食べたけど体に「吸収されなかったもの」みたいな理解の仕方が必要です。
それに対して腎臓は血管内の血液という体の内部にあるものをろ過して体の外に捨てる臓器です。
糸球体でろ過された時点で原尿はトポロジカル的に言えば体外にあることになります。
ろ過しておしっこを作る間に重要な仕事をします。
糸球体というところでろ過を行ってろ過された原尿が尿細管での必要なものを再吸収します。
またろ過されていなくて体に不要なものを尿細管に分泌して捨てます。
そのようにして腎臓を通過した段階で本当に要らないものだけ濃縮されたおしっこが完成します。
この尿細管での再分泌の間の仕事が人体にはめちゃめちゃ大切です。
この段階でナトリウムやカリウムなどの電解質の濃度や浸透圧、pHなどの調整を行います。
ナトリウムとカリウムの細胞内外の濃度と濃度差は身体にとっては一番大切なホメオスターシスの1つでこれを維持するために人体のエネルギーの30%を常時消費します。
決勝浸透圧が狂えばいろいろな物が狂います。
pHの維持は至適pHや至適温度と言って体中のたんぱく質やそれ以外の酵素の活性に影響を与えますし化学反応自体にも影響を与えます。
化学的にみると体全体が巨大な化学反応で成り立っているのでそのバランスが狂うといろいろ狂うことになります。
おしっこが出なくなると、例えば全身状態が悪くなって病院のICUに入れられたりすると一番大切な指標の一つが尿量になります。
完全におしっこが出ないと一番最初に問題になるのは血液のpHになります。
腎臓はなくても透析で代替できます。
・膵臓:外分泌と内分泌
膵臓は消化酵素を作って消化管の食べ物を分解する外分泌臓器でありインシュリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌する内分泌臓器でもあります。
つまり外界からの栄養吸収と吸収した栄養の血中濃度や細胞内濃度の調整に働きます。
中国の自然科学は進んでいて昔から五臓六腑と言って西洋の解剖学の発展以前から解剖学が発展していたのですが膵臓は見落としていたという歴史があります。
・脾臓:血球成分の廃棄
脾臓は血液の血球成分、特に寿命が来た赤血球の解体を行います。
また免疫臓器でもあります。
・骨髄:血球を作る
血球は年齢などの時期によりいろいろなところで作られますが大人になって大切な造血器系は骨の中の骨髄になります。
・消化管:生物が大型化するために必要
消化管は食物から栄養を吸収する臓器です。
臓というと本当は実質臓器で管や中身が中空の膀胱などは腑と言って使い分けましたが現代の医学では気にする必要はありません。
生物が多細胞化し必要だった臓器の一つが消化管です。
消化管がなければ生物は体表から栄養吸収するしかありません。
消化管の発達は神経の出現より先です。
消化管は自立して動くことができます。
脳死状態になってもおなかは動いて消化管は活動しています。
心臓も自律性があり、脳死になっても拍動しています。
運動というと神経と筋肉が支配していそうな感じがしますがそうでない臓器や組織、細胞器官もあります。
消化管は人体最大の免疫臓器でもあります。
免疫とは自分と他者を分けるものです。
消化管は外部から異物を吸収しますので関所や入管審査のようなものが必要です。
原材料や部品、自分の一部は入れてもいいのですが、いれてはいけないものもあります。
ですから人体の半分以上の免疫機能は消化管に集中しています。
ちなみに粘膜がありますが粘液と粘膜上皮細胞とシートが体の中と外の境界をなします。
これは一層の細胞のシートです。
発生学では内胚葉由来の部分はこのシートだけになります。
起動なども内胚葉由来です。
体の内外の協会は上皮細胞という細胞のシートで内外を区切られています。
・皮膚;身体の内外の境界
体の身体の境界でかつ免疫臓器という意味で言うと消化管だけでなく皮膚もそうです。
皮膚は外肺葉由来で消化管などの粘膜上皮細胞とは由来が異なります。
上肺葉由来の細胞は皮膚の上皮細胞と脳を含めた神経細胞だけです。
内胚葉も外肺葉も脳などの例外を除けば細胞のシートです。
脳などの神経細胞も細胞がグリア細胞などを間に挟んだりしますが細胞が直接密着しているという意味では中胚葉由来の組織とは区別されます。
内胚葉や外胚葉由来の細胞は細胞が直接密着してシートを作っているという特徴があります。
それらに包まれている中身が中胚葉由来でこれが「体の中」という事になります。
ですから消化管の管腔内は実は体の外です。
皮膚も消化管のように体の内外を境界しますのでその下は免疫細胞でいっぱいです。
皮膚もやっぱり巨大な免疫臓器です。
皮膚は粘膜ではなく粘液というのに覆われていません。
代わりに角質という固いものに覆われています。
細胞は基本的に細胞外液にしたされていないと生きることができません。
細胞が大気や海水や物体に直接接することはありません。
そのように体は設計されているというか、体はそのようになっています。
・免疫臓器:胸腺
これは子供時代は大切な免疫臓器ですが大人になってからは委縮していきます。
ストレスでも顕著に委縮するのでストレス学説でストレスの変化を受ける3大臓器の一つです。
他は副腎と胃になります。
・内分泌系:下垂体、甲状腺、副腎など
内分泌臓器、或いは器官、或いは組織というのがあって、内分泌物質を分泌します。
これは体内の他の場所にある細胞に血流を伝わって命令を与える物質です。
細胞が情報伝達をする方法はざっくり言うとこの内分泌によるものと神経系によるものと免疫などのサイトカインのように拡散により周辺の細胞にだけ影響を与えるものがあります。
その他もありますが省略です。
下垂体というのは脳の視床下部にくっついていますが脳のように外肺葉由来の部分の他に内胚葉由来の部分を持っています。
標的の細胞に直接命令を出すほか、体の他の部分にある別の内分泌細胞に内分泌物質を分泌するように命令を出します。
標的細胞としては例えば甲状腺というものが首のところにあります。
これは甲状腺ホルモンというものを出し体の代謝調整を行います。
それにくっついて副甲状腺というものもあります。
それは血中のカルシウム濃度の調整を行います。
副腎というのは腎臓にくっついている内分泌器官で副腎皮質ではステロイド系のいろいろなホルモン、髄質ではアドレナリン(エピネフリン)などを放出します。
ステロイド系のホルモンというのは基本構造がコレステロール環で化学反応によりいろいろな物質が作られますがそれらの類似した物質が主に細胞内にある核内レセプターというものに結合して遺伝子の代謝を調整するホルモンの総称です。
副腎皮質では主に糖質コルチコイド(コルチゾール)と硬質コルチコイド(アルドステロン)というものが放出されるのですがそれら以外にも何種類かのステロイド系物質が作られます。
ステロイドホルモンとしては他に男性ホルモン(テストステロン)や女性ホルモン(エストラジオール)、プロゲステロンなどがしられています。
これらはお互いにとても良く似ているので特定の核内レセプターだけに作用するわけではありません。
コルチゾールは糖質コルチコイドとしてある核内レセプターへの結合親和性が他界ですが、他のステロイドホルモンの核内レセプターにも程度の違いはあれ作用したりします。
環境ホルモンと言って人間が向上などで作った、或いは作られてしまった物質が例えば女性ホルモン活性を持っていて人体に作用してしまうような場合もあります。
これは環境汚染の一種と言えるかもしれません。
普通細胞間の情報伝達は片方の細胞が放出した物質を標的細胞の細胞膜にある受容体が受容して細胞内のセカンドメセンジャーと言われる物質によりその細胞に様々な作用をもたらすような形で行われます。
核内レセプターは細胞内の核内レセプターに直接作用して遺伝子の転写を調整します。
・脂肪:結構大切
脂肪は肥満で嫌われますが大切なものです。
脂肪細胞にも種類があります。
体温を上げたりする褐色脂肪や、内分泌物質を出す内臓脂肪(腸間膜脂肪)などが有名です。
昔の病理学では肉眼解剖や顕微鏡と染色方法くらいしか区別のつけようがなかったので脂肪はみな同じようなものとして体中にある脇役みたいに思われていましたが、今ではある種の領域では主役級です。
そもそも人間の外観を作るのは脂肪なので容姿や体形は脂肪で形作られます。
人間の美しさは脂肪の美しさ、と全部ではないかもしれませんが言えるかもしれません。
内臓脂肪のホルモン分泌の発見は画期的でメタボリックシンドロームのもとになりこれは大阪大学の仕事でした。
脂肪はいろんなところにありますが最近は身体で注目されていなかった部分、間質の体液の流れが研究されています。
漢方や中医学では三焦というのですが今後MRIなどの進歩でいろんなことが分かっていくと思います。
・筋肉:代謝臓器として
人間が動けるのは筋肉のおかげです。
筋肉がないと人間は動けず外界と交流できず意思疎通もできないので精神だけの存在になります。
筋肉は生理学の動物機能の方なのでそれは置いといて植物機能としては代謝臓器として重要です。
肝臓、脂肪、筋肉は栄養、代謝臓器として大切です。
カロリー消費もそうですがアクシン、ミオチンのたんぱく質の塊でたんぱく質の代謝、或いはエネルギー不足の場合にタンパク質からエネルギー源となる糖や脂質を作ります。
タンパク質自体は三大栄養素の一つですがエネルギーとして使われるよりは普通は整体の構成要素として、酵素などの機能性蛋白質の部品として使われます。
しかし糖質不足だったりするとタンパク質から糖が作られたりします。
タンパク質自体をエネルギーにする場合には実はエネルギー的には損な場合もありますが糖質というのは身体に絶対に必要です。
特に赤血球は糖質しかエネルギー源として使えませんので炭水化物不足の時には糖原性のたんぱく質からグルコースが作られます。
脂肪細胞が脂質の収納庫とすれば筋肉はたんぱく質の収納庫とも言えます。
その他いろいろな形で体の代謝に関わります。
・骨:カルシウムの貯蔵庫
カルシウムは必須元素です。
骨、歯、軟骨などとして体を力学的に支える材料であるだけではなくてカルシウムの貯蔵元にもなります。
・生殖器:これがないと人間は滅ぶ
女性だったら卵巣や糸球が内部の生殖器に、膣などが外生殖器になります。
男性の場合はペニスも睾丸も外生殖器と言っていいかもしれません。
これは卵子と精子をつくり成功を行い受胎や妊娠、分娩を行う器官です。
体の他の細胞は体細胞と言って極言すれば性細胞である卵子や精子、あるいは性交や子育てのためにあると言っても過言ではありません。
・医学で必要な知識
ざっと思いついた限りで器官とシステムレベルで人体の形態と機能を説明してみました。
今まで説明したのは生理学では生理機能を植物機能と動物機能に分けますが植物機能の方です。
植物機能は細胞のホメオスターシスを保つ仕組みです。
動物機能は感覚や運動や神経系、脳です。
動物機能は本稿では渇愛します。
生体はコンパートメントで分けられた巨大な化学反応系として捉えられ、環境に合わせたエネルギーとエントロピー、合わせてギブスのフリーエネルギーを消費する形で化学反応を行うことで成り立っています。
医学では構造主義の導入は簡単です。
解剖学という形態の実在論の上に各種科学理論という構造主義を重ねていけばいいのです。
構造主義は科学理論という既存なもので事足ります。
高校の理科のちょっと延長線上で学習すれば身につくレベルです。
科学理論だけで疑似的な人間を作ってそのあとで形態的で解剖学的な人間を作るようなアンドロイドやサイボーグを作るような発想でも構いませんが回りくどいです。
どうせ両方使うのですから最初からごたまぜに使っていけばいいのです。
医学的に人間レベルを理解するには分子レベルの大きさで十分なので、古典物理学、化学、生物学の知識があれば足ります。
電子のような素粒子はありますがその程度で量子力学が必要なレベルで考える必要は日常診療レベルでは必要ありません。
医学は応用科学ですので他の自然科学の応用であり、自然科学は物理以外は元をたどれば物理学の応用科学なので大学教養レベルの古典物理学を勉強していれば最終的には医学部で習う人体は理解できます。
でも科学とはいろいろな理論の集合体です。
使いやすい理論で理解すればいいので別に物理学まで突き詰める必要がない場合が多いです。
ですから医学部受験では物理学は必修ではありません。
徹底的に医学全般を極めたいと思えば物理学が必要になりますが日常臨床は特定分野の医学者であれば物理に不案内でも一流の医者、医学者になることができます。
科学理論の集合体として人体を見る視点は構造主義的です。
理論というものは現代では構造主義化されているからです。
かといって実在論から離れる必要もありません。
分子を実体としてとらえる視点で十分です。
効率よく医学を学ぶなら実在論とか構造主義とか区別せず、断章取義、当地即妙、融通無下にいいとこどりだけしてまさにレヴィストロースのいうブリコーラージュ、ドゥルーズ=ガタリのように機械として人間をとらえてしまって構いません。
その際に実在論的な面と構造主義的な面をまぜこぜにしてしまった方が実用的です。
哲学の文脈では実在論絶対主義≒モダニズム批判のために構造主義があたかも実在論を否定するものであるかのように構造主義が利用されましたが本来別個の独立なもので両者の視点を合わせて使うのが一番いい場面が多いと思います。
ただ必要によって実在論だけで見る、構造主義だけで見るというとんがった視点も知的技法として持っているとこれからは量子コンピューターやら半導体のロジック回路で作られたのとも材料も演算回路の思想も違ういろいろなコンピュータも作られていくと思いますし、社会の基礎を理解するのに役に立ちます。
また一部の知的で理性的な場面、例えば批評や分析の場では構造主義を知らないと不便だったり通じない場面が多いので、とんがった視点とまぜこぜにする実用力、生活力を両方持っておくと便利です。