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  • 2024年11月27日
  • 2025年1月31日

学校の勉強を生かす医学、息が止まると何が問題かー酸素より二酸化炭素

学校の勉強を生かす医学、息が止まると何が問題かー酸素より二酸化炭素

息止めの影響

息が止まると苦しくなります。

これは酸素が足りなくなると考えられていることがよくあります。まあ、そういう側面もあるのでしょうが私たちがヨーイドンで息を止めた場合に影響が出るのは酸素が少なるからではありません。

二酸化炭素が排出できなくて溜まるからです。


何故、酸素でなく二酸化炭素か

呼吸というのはまず換気からです。

肺を膨らませたり縮ませたりして酸素を取り入れ二酸化炭素を排出します。

息を止めた時に最初に影響が出るのは酸素が足りなくなる方ではなく二酸化炭素が溜まることです。

体液に、水を主成分とする液体に溶ける二酸化炭素が増えれば酸性になります。例えば飲料水の炭酸とかがそうかもしれません。

生物学を勉強していると至適pHと至適温度というのを習います。

酵素が1番活性を持つpHと体温という風に生物学で習うかもしれません。

酵素は触媒の様なものなので機能低下すると身体の色んな生化学反応が乱れます。そのせいか酸素の低下よりは二酸化炭素の上昇を私たちは先に感じます。

酸素はなかなか低下しない

パルスオキシメーターという血液の酸素飽和度を測る機械があります。

最初に開発したのは日本のメーカーですが、いろいろ事情があって外国で先に開発だか商品化だかされた様になっています。

それを付けていると息を止めても酸素飽和度はなかなか低下しません。

酸素飽和度が低下し始めるのには息を止めてから数分かかります。

ミオグロビンやヘモグロビンをはじめ生体は酸素は結構備蓄しています。

そのせいかどうかは分かりませんが二酸化炭素の蓄積の方が先に影響が出る様です。

酸素の欠乏には人間は鈍感

普通は息を止めると二酸化炭素によるアシドーシスの影響で酸素の欠乏までいかないうちに呼吸を再開します。

気合いを入れると息苦しい中で酸素飽和度の低下まで呼吸を止めることはできます。

ただ、その息苦しさは酸素飽和度の低下ではなく二酸化炭素の蓄積で起こります。

奇異に感じるかもしれませんが二酸化炭素さえ排出できていたら酸素の欠乏だけでは症状が出ません。

それで身体の酸素欠乏に気がつかない場合があります。

坑道のカナリア?

坑道や洞窟や地下室ではそこに含まれる酸素が欠乏している場合があります。

閉塞的で外気との換気が行われにくい密封的な環境です。

仮にそこにある気体が化学反応性に乏しい希ガスのたとえばヘリウムだったとしましょう。この場合、息止めしていないでそこに入ったとすると普通に気体を擦ったり吐いたりして換気をしています。

息を吐くので二酸化炭素は排出できますが、酸素がないので酸素が身体に入ってくることがありません。この場合、人間は息苦しさを感じないまま意識を失う場合があります。

二酸化炭素はたまっていないのでアシデミアにはなっていないのですが、全身、特に脳に行く酸素が欠乏します。

息をしていれば肺胞でガス交換されて血管から二酸化炭素が肺胞に放出されて体外に出ていきます。

普通の空気では二酸化炭素と入れ違いに酸素が肺胞から血管に入っていきますが、酸素がない場合には二酸化炭素は排出できても酸素は吸収できません。

ヘリウムを吸収するかもしれませんがヘリウムを体に吸収しても特に毒にも薬にもならないでしょう。


人間は酸素欠乏より二酸化炭素蓄積に敏感

人間は二酸化炭素の蓄積には敏感です。

血液や体液が炭酸になっては困ります。

二酸化炭素の欠乏に敏感で、二酸化炭素の欠乏を先に探知するためか、人間は酸素の欠乏には鈍感です。鈍感というより普通は酸素欠乏には気付きません。

気付かぬまま一気に意識を失います。それ以外の症状もあるかもしれませんがともかく酸素欠乏察知が二酸化炭素過剰に比べて鈍感になっています。

だから坑道や洞窟では知らない間に命を落とすことがあります。

人間が酸素欠乏に気づいて意識する前に意識を失うからです。

COPDの例

昔の人はタバコをよく吸ったのでCOPDの人がたくさんいました。

今は、公衆衛生が進歩したためか酸素タンクを引いて歩いているおっちゃんを見ることがあまりなくなった様に思います。

肺は風船みたいなものです。

弾力があって呼吸筋や横隔膜のおかげで大きくなったり小さくなったりします。肺胞の表面積が広いので呼吸あたりのガス交換量も多いです。

COPDは、気道・肺胞・細気管支などの構造が壊れているので、有効なガス交換ができずに二酸化炭素が普通の人よりたくさん蓄積してそれに慣れるというか適応してしまいます。

恒常的に二酸化炭素が多いので二酸化炭素の増加が息苦しさを起こさなくなっています。

そうなると人間というか生体は大したもので二酸化炭素の蓄積より酸素不足に敏感に反応する様になります。

COPDの人は二酸化炭素の蓄積より先に酸素欠乏に反応するように体が変化しています。

COPDの注意

肺に障害がない人では普通酸素欠乏より二酸化炭素増加を感知します。

酸素欠乏感知能力は0になっているかもしれません。

COPDの人は逆に二酸化炭素増加より酸素欠乏を感知します。酸素が足りないと息苦しさを感じます。

二酸化炭素増加に対しては感覚が鈍くなっています。そういう人に酸素投与を行うと酸素が十分に得られるので苦しさは感じません。

そのために換気が少なくなって二酸化炭素が蓄積する場合があります。

二酸化炭素が体に蓄積し過ぎます。

すると意識障害が起きます。これをCO2ナルコーシスと言います。

ナルコーシスとは麻酔みたいな意味です。


高地の生理学

エベレストをはじめ8000m級の山が地球にはあります。

空気の密度は地上の3分の1くらいです。こういう山々を登頂しようとする登山家たちがいます。

ここまで極端ではなくてもスポーツ選手が競技のパフォーマンスを上げるため高地順応をするため海抜が高いところでトレーニングする場合があります。こういうところでは換気はできるので二酸化炭素は吐き出せます。

しかし酸素の濃度が低いです。

酸素分圧が海抜が低い地表の3分の1だったりします。

酸素が薄すぎるとやはり問題を生じます。

酸素なしでも細胞はエネルギーを産生できますが、酸素を使ったエネルギー産生量に遠く及びません。


結論

結論としては人間は8000m級の高地には長く留まれません。

数日くらいの滞在なら可能の様です。ですからエベレストの無酸素登頂というのは大変な偉業になるわけです。

8,000m級では湿度や温度も問題になります。

極地と呼ばれる所以です。

8,000m級どころか宇宙空間ではもっと問題があります。

宇宙空間というと無重力に関心がいきがちです。でも、重力が地上並みでも真空の密室に放り入れられたらやはり問題が生じます。