- 2026年2月8日
「お金」はどこから来るのか?──3レイヤーで見る“真・マクロ入門”
「お金」はどこから来るのか?──3レイヤーで見る“真・マクロ入門”
(ついでに:なぜ金利と国債利回りがニュースを支配し、なぜ日本は30年も足踏みしたのか)
教科書のマクロ経済って、だいたい**「リンゴとミカンの物々交換」から始まりますよね。
あれ、RPGでいうと「村の外に出るまで3時間かかるチュートリアル」です。現代人はもう最初から銀行口座とカードとローンと国債と中央銀行**の世界に投げ込まれてるのに。
現代のコアはシンプルです。
お金は“貸し借り(バランスシート)”から生まれる。
そして、私たちが生きてる経済は「実物」と「金融」と「交換ゲート」の三層で回ってる。
この見取り図(3レイヤー)を頭に入れると、
金利・利回り・国債・日銀バランスシートが“一枚の絵”としてつながり、
ついでに失われた30年も「事故の報告書」みたいに読めるようになります🔥
導入:まず“信用貨幣”を正面から置く
ここが肝です。現代の通貨は、金塊じゃなくて“信用の記録”。
しかも、銀行貸出が預金(=マネー)を作る、というのが基本動作です。イングランド銀行自身がはっきり書いてます。
そして、あなたの直感どおり、国債や証券は「ただの借金」では終わりません。
金融市場では “担保として即・現金化できる力” を持ち、マネーに限りなく近い(準マネー/担保マネー)として機能します。日銀のマネーストック統計でも、広義流動性の中に「国債+外債」が入っています。
図1:経済は「3つのレイヤー」で回っている(最重要)
【①創造レイヤー:金融=“お金が生まれる工場”】【信用創造・国債・シャドー】
銀行融資 / 社債 / 国債 / レポ / 証券化 / デリバティブ ……
│ (バランスシートが伸び縮みする)
▼
【②交換レイヤー:市場=“認証ゲート”】【価格・金利・為替・信用スプレッド】
「いくらなら取引が成立するか?」=金利・利回り・物価
│ (ここが詰まると血栓)
▼
【③実体レイヤー:生活=“モノとサービス”】【労働・設備・技術・資源】
給料 / 仕入れ / 投資 / 消費 / 生産能力(供給制約)
- ①創造:お金(信用)が“増えたり減ったり”する場所
- ②交換:その信用が“価格として認証される”場所(=市場)
- ③実体:実際に人が働き、食い、暮らし、作る場所
そして、ニュースでいつも騒いでる「金利」「利回り」は、
**②交換レイヤーのゲート料金(通行料)**みたいなものです。
ゲートが高くなると(高金利)通れない取引が増え、低くなると(低金利)通れる取引が増える。
図2:お金が生まれる瞬間(万年筆マネーの“骨格標本”)
銀行が企業に融資するとき、銀行は「誰かの預金を右から左へ」してるだけではありません。
(細部の制度は色々あれど)原理としてはこういう感じになります。
銀行が100を貸す
- 企業:預金 +100(資産増)/借入 +100(負債増)
- 銀行:貸出 +100(資産増)/預金 +100(負債増)
結果:預金(マネー)が増えた。
この骨格が、現代の“信用貨幣”です。
国債は「お金」なのか?──答え:決済通貨ではないが、SSR級の“担保マネー素材”
ここ、言い切ります。
- コンビニで国債を出してコーヒーは買えない(=M1ではない)
- でも金融の世界では、国債は 「担保にすると資金が即出る」
- だから市場実務では、国債は **“金利の付いた現金っぽいもの”**として動く
日銀の広義流動性は、まさにその「現金っぽいもの」まで含めて把握する枠で、
そこに **「国債+外債」**が入っています(=“準マネー扱い”の公認)。
また、広義流動性の構成要素は「政府(国債)や非居住者(外債など)を発行主体とするものも含む」と説明されています。
ここで“毒”を少々:
**「国の借金は家計と同じ」**は、マクロ理解に対する最強のデバフです。
家計は通貨発行できない。国家は(制度上の制約はあるにせよ)通貨システムの中枢にいる。
同じ“借金”という日本語が、脳内で別物を合体させてしまう。
具体例1:民間信用が縮むと、なぜ経済が干上がるのか
バブル崩壊後、日本で起きた本丸はこれです:
民間が借りない(=信用創造しない)
→ ①創造レイヤーが縮む
→ ②交換レイヤーの取引が細る
→ ③実体レイヤーの売上・賃金・投資が細る
→ 「景気が悪いから借りない」が自己強化(デフレ・停滞)
企業や家計が「返済(デレバレッジ)」に走ると、
借金が減る=誰かの資産(預金増分)も増えにくい/消える方向に働きます。
このとき、みんながミクロ的には“正しい節約”をしても、
マクロでは血流が止まる(合成の誤謬)になりがち。
具体例2:財政の役割──民間が縮むとき、政府は“穴埋めの信用創造”になれる
民間が縮む局面での政府は、雑に言うとこういう立ち位置になります。
- 民間:借りない/返す(信用が増えない)
- 政府:支出(需要)を維持する装置になれる
- 国債:そのための制度上のエンジン部品
ここで重要なのは、国債=悪か善か、じゃない。
どのレイヤーで何が詰まっているかで設計が変わる、という話です。
- ③実体が供給制約でパンパンなら:財政拡張はインフレを煽る(悪い燃料投下)
- ①創造が縮んで③がスカスカなら:財政は“血液の輸血”になる(機能する)
「緊縮か積極か」は宗教論争にしない方がいい。
診断(どこが詰まってるか)→処方の順です。医者的に。
具体例3:日銀バランスシートは何を“意味している”のか
ここも一気にいきます。
日銀バランスシートの直感
- 資産側:国債などを買う
- 負債側:日銀当座預金(=銀行が日銀に持つ“準備”)が増える
日銀の市場操作や国債買入れは、日銀当座預金(準備)を増減させます。
この「準備」が増えたからといって、それが自動的に家計の財布にワープするわけではない。
準備は基本、**銀行間決済の世界(①〜②の内側)**にいる。
だから、日銀バランスシート拡大はこう理解するとスッキリします:
- ①創造レイヤーの“条件整備”(金利を押し下げ、担保・流動性の安心感を作る)
- ただし、民間が借りない/借りる先の儲かる投資機会がないなら、
③実体は温まりにくい(いわゆる“ロープを押す”問題)
つまり日銀は「点火装置」にはなれるが、
“燃える材料(投資機会・期待・需要)”がないと大火にはならない。
失われた30年を「3レイヤー」で説明すると、こうなる(図2.5)
1990s バブル崩壊
↓
民間:返済・縮小(①創造レイヤーが縮む)
↓
②交換:取引が減り、価格が下がり、期待が冷える
↓
③実体:賃金・投資・成長が伸びない
↓
「将来不安」→さらに民間が借りない(ループ)
この局面での政策論点は、だいたい3つに還元できます:
- 民間信用の縮みを、何が埋めるのか?(政府?外需?新産業?)
- **②交換レイヤー(価格・金利・期待)**を、どう正常化するのか?
- **③実体レイヤーの成長(供給能力・生産性)**に、どう接続するのか?
(教育・研究・インフラ・規制・人口動態…ここは“実体の勝負”)
このモデルのいいところは、
「財政=善」「緊縮=悪」みたいな幼児化を避けて、
“詰まりの場所”で議論を整理できる点です。
なぜ金利・利回りがニュースになるのか(これで腑に落ちる)
金利・利回りは、ただの数字じゃありません。
- ①創造レイヤー:信用を作るコスト(借りるコスト)
- ②交換レイヤー:資産価格の割引率(株・不動産・為替・債券の心臓)
- ③実体レイヤー:住宅ローン・設備投資・財政コスト・可処分所得に直撃
だからニュースは金利を追う。
金利は**“経済という巨大生物の脈拍”**みたいなものなので。
「国家=シャドーバンク」論の扱い方(精密化)
あなたの表現はかなり本質を掴んでます。微修正するなら:
- 銀行(銀行システム):信用創造の主力
- 政府:国債という“最強担保”を供給し、財政で需要を作れる
- 中央銀行:最終流動性供給者。決済インフラと金利を支配
- シャドーバンキング:銀行外の信用仲介(定義自体、FSBがそう言ってる)
政府を「シャドーバンク」と呼ぶのは比喩として強い。
ただ、厳密には“銀行外”という意味のシャドーとは違うので、記事ではこう書くと綺麗です:
政府は“信用供給装置”であり、国債は“担保マネーのSSR素材”。
シャドーを含む金融システム全体が、その素材で流動性を増幅させる。
これで、比喩の火力を落とさずに制度的にも破綻しません。
まとめ:この3レイヤーでニュースも政策論争も“解像度”が上がる
最後に要点だけ、短く刺します。
- お金は、貸し借り(バランスシート)から生まれる
- 国債は決済通貨ではないが、担保として準マネー級に機能する(広義流動性に「国債+外債」)
- 失われた30年の核心は「民間信用の縮み」→取引の縮み→実体の停滞
- 財政は“詰まり”が①→②→③のどこにあるかで評価が変わる
- 日銀バランスシートは“実体に直接お金を撒く魔法”ではなく、金融条件を設計する装置
そして、いちばん大事なメッセージはこれです:
経済を「家計簿道徳」で裁くのは、
心臓外科を「気合と根性」でやるのに近い。
必要なのは、**血流(信用)と詰まり(価格・期待)と筋肉(実体)**の診断と設計だ。
※この記事は金融リテラシー解説で、特定商品の投資助言ではありません。