- 2024年8月30日
- 2024年10月24日
逆算と逆算から学数学ー分数の割り算はなぜひっくり返してかけるのかー逆算と逆数
ー 神は自然数を創りたもうた。他は人間のわざである ー
レオポルト・クロネッカー
逆算という言葉
「神は自然数を創りたもうた。あとは人間のわざである」
これは代数学を公理化して現代代数学の創始者の1人と言われるレオポルト・クロネッカーという数学者の言葉です。
小学校では逆算という言葉を習うようです。
私は知りませんでしたが私の小学校の子供がそう習っていました。
「逆算」というのは足し算に対しては引き算、掛け算に対しては割り算のことです。
私は小学校で「逆算」という言葉を習っていたのか記憶が薄のですが、大学以上の数学の教科書で「逆数」という言葉は数学で勉強したことがあります。
「逆数」という言葉は私と同じく中学受験したことのない人は私の様に「逆算」という言葉を教わったかハッキリしない人も多いのではないではないでしょうか。
「逆算」と「逆数」を通して数学を眺めてみましょう。
そして「なぜ分数の割り算はひっくり返してかけるのか?」について説明します。
分数の掛け算
- 2÷1/3=2×3=6
- 3÷2/5=3×5/2=15/2
上の例のように分数で割るときに分数をひっくり返して掛け算にして計算するやり方を「逆算」というようです。
私の小学生の息子は2人とも「逆算」でつまずきました。
下の子は今もつまずいています。
別になんでひっくり返してかけるのかということには疑問は持っていないようです。
いずれやり方だけ学んでなれるのかもしれません。
ただ人生のどこかで「なぜ分数で割るときに分数をひっくり返してかけるのか?」について疑問を持ったり質問されたりする経験がある人は多いのではないでしょうか。
それについての回答がよく分からなかったこともあるのでは?
それについて1つの回答の仕方をご紹介します。
中学では割り算がなくなる?
私は中学生になった時に「中学では『÷』を使わない」と習いました。
みんなそうなのではないでしょうか。
かけるという記号「×」も「・」やスペースで代用する様なことも習いました。
あえて割り算することを強調する場合以外には「÷」は使わないのではないでしょうか。
「÷」を使わず掛け算で代用するのです。
「ー」マイナスの導入
小学校では習いませんが中学校ではマイナスの数を習います。
マイナスの数を使えば足し算だけあれば引き算は必要なくなります。
「逆数」というものがある
計算というものは割り算を使わず掛け算で代用できます。
同様に計算は引き算を使わず足し算で代用できます。
掛け算の逆算は割り算です。
足し算の逆算は引き算です。
引き算は小学校で習いますが、中学では引き算を使わずマイナスの数を使って足し算だけで引き算と同じ計算をする方法を学びます。
それに先立って学ぶのがマイナスの数です。
① 3ー2=1
② 3+(ー2)=1
上の様にある数にマイナスの数を足せばそれは引き算と同じになります。
上での2に対してのー2を2の逆数と言います。
足し算では0は特別な数です。
足して0になる数を逆数になります。
2の逆数は−2です。
123の逆数は−123です。
−2の逆数は2です。
−123の逆数は123です。
逆数を使うことで演算の数を減らせます。
足し算と引き算という2つの演算がただ1つの演算足し算だけにできて引き算をなくせます。
マイナスの数「逆数」を導入することで足し算の逆算である「引き算」という演算をなくせます。
数の種類を増やして演算の数を減らすことになります。
掛け算と割り算の逆算と逆数
掛け算の逆算は割り算になります。
掛け算の逆数は割る数を分数にして逆さまにしたものになります。
掛け算にとって特別な数は1になります。
掛けると1になるを逆数と言います。
③ 2×(1/2)=1
④(4/5)×(5/4)=1
上の③の掛け算で2の逆数は(1/2)です。
④の掛け算で(4/5)の逆数は(5/4)です。
逆数という考え方を導入すると「割り算」という演算の必要がなくなります。
自然数の掛け算の逆数と分数
上の③で掛け算の2の逆数として(1/2)という分数を使いました。
割り算という演算をなくすためには掛け算できる全ての数に対応して逆数が必要になります。
そのためにここでは分数というものを使っています。
逆数を表すために別の方法を使うのもいいでしょう。
例えば−1を右上につけることで逆数であることを示す方法です。
ここまでは高校までで習うでしょう。
ちょっと見方を変えてみましょう。
足し算の場合、引き算という演算をなくすために「マイナスの数」という新しい数を作りました。
掛け算の場合はどうでしょうか?
掛け算の場合は割り算という演算をなくすために「分数」という新しい数を作るという見方をすることが足し算の場合と同様にできます。
割り算という演算をなくすために「分数」という数を作ったとしましょう。
その場合割り算と同じことをするために分数の分母と分子をひっくり返した数をかけます。
これが「割り算の場合は割るかずをひっくり返してかける」というアルゴリズムとなります。
アルゴリズムとは「手順」や「計算の具体的なやり方」「計算の形式的なやり方」と訳しましょう。
同じ計算をするのにそろばんを使ってもいいですし筆記で計算してもいいのと同じです。
同じ計算をする場合に使うそろばんもいくつもの種類が考えられますし、筆記で解く場合も色々な方法があります。
つまり別解はたくさんあります。
分数の割り算、逆数と逆算
「ある数を分数で割る時、その分数をひっくり返してかける」
というのは割り算という掛け算の逆算と分数というものが必要になります。
つまり分数というものと割り算というものがどちらもある世界での話になります。
仮に冒頭のクロネッカーが言うように自然数しかない世界で割り算をしようと思えば分数はありません。
分数ができる代わりに小学生が習うように商と余り(剰余)が出るのみです。
自然数に分数という新しい数を導入するとそれを逆数として使うことができます。
分数を導入すれば割り算というものは必要なくなります。
次のような問題を考えてみましょう。
- 「分数が先にあって、それに分数をひっくり返してかけるという割り算のアルゴリズムが生まれたのか」
- 「割り算を円滑に行うために分数という新しい数を導入したのか」
⑤も⑥も面白い問題です。
⑤でも⑥でもどうとでも考えることができますが、ある一定数の人は冒頭の「なぜ分数の割り算はひっくり返して掛けるのか?」という問題を考え込んでしまう羽目になります。
中断して再度逆数を考える
足し算の場合0という特別な数があります。
また、ある数の逆数の逆数は元の数になります。
掛け算の場合には1という特別な数があります。
掛け算の場合もある数の逆数の逆数は元の数になります。
つまり足して0になる場合、足した2つの数はお互いに相手の1つの数の逆数になります。
同じようにかけて1になる場合、掛けた2つの数はお互いに相手の数の逆数になります。
抽象数学ー「群論」や「集合論」
高等数学は高校で習う数学ではありません。
大学の教養学部で習う数学でもないでしょう。
大学の専門学科で習う数学と考えれば良いと思います。
つまり大学の教養で習う「微分・積分」「線形代数」「統計・確立」は単純には高等数学ではありません。
大体の教科書では最初の総論の部分に論理学や集合論や群論がまとめてかいつまんで説明されているようです。
実は総論に書かれているような部分こそが数学の基礎であり抽象数学です。
別に複素数を扱おうが4次元以上の多次元を扱おうがそれだけでは高等数学とは言いにくいです。
集合とついでに位相、代数学でも線形代数学だけではなく一般的な代数学を勉強して初めてクロネッカーの言葉の意味がわかるようになります。
すなわち「神は自然数を作った。他は人間のわざである」です。
クロネッカーは自然数から整数、有理数、無理数などを構成してみせます。
現代数学は構成的で形式的なものです。
高等数学ではまずは数や演算を作ります。
そのベースが集合論であったり代数学であったりします。
ちなみに集合論的にいうと逆数というのは逆元です。
それに合わせると数は元です。
数は元の特殊な場合です。
数は集合論から言えば数という元の集合です。
結論:逆数があれば逆算はいらない
最終的なこの文章の結論は「逆数があれば逆数はいらない」というものです。
小学生で、もしマイナスの数を習うのであれば引き算を習う必要はありません。
これはピンとこないかもしれませんが、「掛け算における逆数」という考え方があれば分数も分数をひっくり返すアルゴリズムも必要ありません。
抽象数学や数学基礎論の立場から見れば、小学生で引き算を習うのはマイナスの数を教えないからとも言えますし、割り算で分数をひっくり返してかけるのを教えるのはアルゴリズムの便利さ、分数を教える都合上、そして割り算を教えないという選択肢がないからだとも言えます。
四則演算や分数が先行してインドでの零の発明や群論の発見が後になるのは人間の脳と認知の発達上自然なことなのかもしれません。
抽象とは実は物事の根本かもしれませんが、一方で具象に対するメタ認知なのかもしれません。